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新潟地方裁判所 昭和50年(わ)65号 判決 1975年9月27日

本籍

長岡市東坂上町二丁目四番地一二

住居

同 市金房一丁目二番二四号

会社役員

大平秀二

昭和一三年七月一二日生

本店所在地

長岡市金房一丁目二番二四号

有限会社大平商事

(右代表者代表取締役大平秀二)

右の者に対する所得税法違反、法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官荒木紀男、弁護人山田昇各出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人大平秀二を懲役八月及び罰金三〇〇万円に、被告人有限会社大平商事を罰金七〇〇万円にそれぞれ処する。

被告人大平秀二において右罰金を完納することができないときは、金一万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

被告人大平秀二に対し、この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用はその二分の一ずつを各被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

第一  被告人大平秀二は、大平政吉の二男で、同人の営む仏壇等の販売業を補佐し、同人の所得税に関する決算、税の申告等の事務を担当していた者であるが、同人の昭和四六年分の所得税を免れようと企て、別紙一、四記載の如く、同年の同人の実際の総所得金額が一、七六三万三、七二七円で、これに対する正規の所得税額が七〇四万七、五〇〇円であつたのに、同被告人の母大平ヒサの記帳した金銭出納帳に記載の額を下回る入金伝票を作成し、これを関与税理事務所員に示したほか、実際の事業所得金額をはるかに下回る額を計上することを指示し、政吉の右年度分の総所得金額が二六三万六、八八〇円で、これに対する所得税額が二四万九、二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を作成させたうえ、昭和四七年三月一〇日、長岡市南町三丁目九番一号所在の長岡税務署において、同税務署長に対して右確定申告書を提出し、もつて、不正の行為により右年度分の所得税六七九万八、三〇〇円を免れ、

第二  被告人会社は、仏壇等の販売等を営業目的として昭和四六年九月一日設立された資本金一、〇〇〇万円の有限会社であり、肩書地に本社を有するもの、被告人大平秀二は、右設立以来同社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人大平秀二は、被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、

一  別紙二、五の如く、昭和四六年九月一日から昭和四七年八月三一日までの事業年度における被告人会社の実際の総所得金額が四、四一六万六、三八四円で、これに対する正規の法人税額が一、五九六万八、五〇〇円であつたのに、被告人大平秀二の妻大平テイ子に指示して金銭出納帳に売上額を過少記載させたほか、税理士事務所員に期首棚卸高を過大計上することを指示するなどして、被告人会社の右事業年度における総所得金額が二七一万三、七〇七円で、これに対する法人税額が七五万九、六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を作成させたうえ、昭和四七年一〇月三一日、前記長岡税務署において、同税務署長に対して右確定申告書を提出し、もつて、不正の行為により右事業年度の法人税一、五二〇万八、九〇〇円を免れ、

二  別紙三、六の如く、昭和四七年九月一日から昭和四八年八月三一日までの事業年度における被告人会社の実際の総所得金額が五、一四六万三九九円で、これに対する正規の法人税額が一、八三九万一、五〇〇円であつたのに、前記一同様に大平テイ子に指示して金銭出納帳に売上額を過少記載させるなどしたほか、税理士事務所員に指示して期末棚卸高を減額し、架空仕入を計上させることを指示するなどして、被告人会社の右事業年度における総所得金額が二、一八四万八、四四五円で、これに対する法人税額が七五一万六、六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を作成させたうえ、昭和四八年一〇月三一日、前記長岡税務署において、同税務署長に対して右確定申告書を提出し、もつて、不正の行為により右事業年度の法人税一、〇八七万四、九〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

(括弧内の算用数字は第一回公判調書中の証拠関係目録の証拠番号を、「押」表示下の数字は昭和五〇年押第四二号の符号を示す)

判示全部の事実につき

一、被告人大平秀二の当公判廷における供述

一、大平ヒサ(昭和四八年一二月六日付、139)、反町秀司(153)、片桐幸雄(155)、渋谷忠(同年一二月四日付、158)の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一、大平テイ子(152)、反町秀司(154)、片桐幸雄、渋谷忠(163)の検察官に対する各供述調書

一、被告人大平秀二の大蔵事務官に対する昭和四八年一二月五日付、一二月七日付各質問てん末書(298、299)

一、同被告人の検察官に対する供述調書(329)

判示第一、第二の冒頭の事実につき

一、大平政吉(昭和四九年四月一八日付、133)、大平ヒサ(昭和四八年一二月六日付、139)の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一、大平政吉の検察官に対する供述調書(138)

判示第一、第二の一、二の事実につき

一、押収してある納品伝票控一冊(8、押8)及び金銭出納帳一冊(28、押28)

一、大平ヒサ(昭和四九年四月一七日付・四月一九日付・九月五日付・九月一九日付・一一月八日付・一一月九日付・140ないし145)渋谷忠(昭和四八年一二月一三日付・昭和四九年七月一八日付・一〇月二四日付・一〇月二五日付・159ないし162)の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一、佐藤武雄作成の答申書(151)

一、岩崎栄 作成のたな卸資産の評価について調査書、神棚・仏具たな卸調査書(291、292)

一、被告人大平秀二の大蔵事務官に対する昭和四八年一二月一三日付、昭和四九年五月一〇日付、九月四日付、九月六日付、一一月九日付、九月一三日付各質問てん末書(300ないし302、305、309、326)

判示第一、第二の一の事実につき

一、押収してある金銭出納帳(2、押2)

一、同在庫メモ五枚(14、押14)

一、同総勘定元帳(15、押15)

一、同領収書控(40、押40)

一、小林観一(昭和四九年二月一三日付二通、257、258)、小林孝平(同年二月七日付二通、262、263)、矢部清文(同年二月七日付、六月一八日付、264、266)、田中憲司(昭和五〇年一月九日付267)各作成の各証明書

一、小池武彦作成のたな卸調査書(281)

一、岩崎栄作成の売掛金調査書(282)

一、被告人大平秀二作成の昭和四九年一〇月二日付答申書(323)

判示第一、第二の二の事実につき

一、小林観一作成の昭和四九年二月一二日付証明書(259)

判示第一の事実につき

一、押収してある金銭出納帳(1、押1)

一、大平政吉の大蔵事務官に対する昭和四九年四月一九日付、五月三〇日付、一〇月二五日付各質問てん末書(134ないし136)

一、同人作成の答申書(137)

一、同人の検察官に対する供述調書(138)

一、小池武彦作成の46年分売上調査書、46年分仕入調査書、46年分経費調査書、46年分減価償却費調査書、譲渡損失調査書、見越事業税調査書、不動産所得収支計算書、借入金及び支払利息調査書、昭和四六年分所得税の更生等決議書、調査所得の説明書(274ないし280、283、293、294)

一、被告人大平秀二の大蔵事務官に対する昭和四九年一〇月二六日付質問てん末書(307)

一、同被告人作成の昭和四九年一〇月二三日付、一〇月二二日付、一〇月二四日付、一〇月一九日付、一〇月一二日付、一〇月五日付、一〇月二二日付、一二月四日付、九月一八日付各答申書(311ないし319)

判示第二の冒頭の事実につき

一、登記簿謄本(327)

判示第二の一、二の事実につき

一、押収してある金銭出納帳一冊(30、押30)

一、同コクヨ領収書控七冊(36ないし39、41、押36ないし39、41)

一、同領収書控一綴(38、39、押38、39)

一、同総勘定元帳一冊(47、押47)

一、大平テイ子の大蔵事務官に対する昭和四九年四月一九日付、九月六日付、一〇月二六日付各質問てん末書(148ないし150)

一、小林観一作成の昭和四九年二月一二日付証明書(260)

一、田中憲司作成の昭和五〇年一月九日付証明書(268)

一、沢田勝利作成の簿外売上調査書、簿外一般管理費及び販売費調査書(285、287)

一、宮崎光作成の仕入金額調査書、受取利息及び支払利息割引料調査書(286、288)

一、佐藤竹雄作成の売掛金調査書(289)

一、岩崎栄 作成の車両運搬具調査書(290)

一、被告人大平秀二の大蔵事務官に対する昭和四八年一二月四日付、昭和四九年九月五日付、一二月四日付各質問てん末書(297、303、310)

一、同被告人作成の昭和四九年一〇月二三日付、一〇月五日付、一〇月二二日付各答申書(320ないし322)

判示第二の一の事実につき

一、押収してある金銭出納帳二冊(3、29、押3、29)

一、同納品書控(42、押42)

一、同受注書(43、押43)

一、同現金出納帳(48、押48)

一、同たな卸原票(71、押71)

一、石川達郎作成の証明書(261)

一、宮崎光作成の調査書得の説明書(295)

一、被告人大平秀二の大蔵事務官に対する昭和四九年一〇月二三日付質問てん末書(306)

一、同被告人作成の昭和四九年一〇月三日付答申書(324)

判示第二の二の事実につき

一、押収してある金銭出納帳四冊(31、44、45、80、押31、44、45、80)

一、同納品書控(76、押76)

一、同売上帳(80、押80)

一、同仕入帳(82、押82)

一、同たな卸表(89、押89)

一、同現金出納帳三冊(105、106)

一、大平テイ子の大蔵事務官に対する昭和四八年一二月六日付質問てん末書(147)

一、矢部清文作成の昭和四九年二月七日付証明書(265)

一、宮崎光作成の調査所得の説明書(296)

一、被告人大平秀二作成の昭和四九年一〇月三日付答申書(325)

(法令の適用)

被告人大平秀二については、判示第一の所為は所得税法二四四条一項、二三八条一項に、判示第二の一、二の各所為はいずれも法人税法一五九条にそれぞれ該当するが、右各罪の刑につき、いずれも懲役刑と罰金刑を併科して処断することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪なので、懲役刑については同法四七条、一〇条により犯情の最も重い判示第二の一の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により判示各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人大平秀二を懲役八月及び罰金三〇〇万円に処し、同被告人において右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金一万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、情状により、同法二五条一項を適用して、この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとし、被告人会社については、判示第二の一、二の各事実はいずれも法人税法一五九条、一六四条一項に該当するが、右は刑法四五条前段の併合罪なので、同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で被告人会社を罰金七〇〇万円に処することとする。

訴訟費用は、刑事訴訟法一八一条一項本文により各被告人にその二分の一ずつを負担させることとする。

(量刑の事情)

本件各犯行は、いずれも主として事業の拡大資金を得ることを目的として敢行されたものであつて、その動機には何ら酌量すべき余地のないこと、その手段、態様は前記の如く極めて大胆、悪質であること、また、犯行が連続して三回に及んでいること、申告率が低いうえ、脱税総額が多大であること等に鑑みると、事案は悪質かつ重大であつて、被告人らの罪責は重いというほかない。

しかしながら、犯行後の被告人大平秀二らの態度に改悛の情を認め得ること、本件脱税にかかる更正処分を受ける前に同被告人らによつて各修正申告がなされ、現在それに従つて納税されつつあること、同被告人にこれまで取り上げるべき前科、前歴のないこと、その他、本件の発覚により、被告人らが既に少なからず社会的制裁を受けていること等諸般の事情を考慮して各刑を処断した。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 岩垂正起)

別紙一 修正損益計算書

大平政吉

自昭和46年1月1日

至昭和46年12月31日

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

別紙二

修正損益計算書

有限会社大平商事

自昭和46年9月1日

至昭和47年8月31日

<省略>

<省略>

<省略>

別紙三 修正損益計算書

有限会社大平商事

自昭和47年9月1日

至昭和48年8月31日

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

別紙四

脱税額計算書

自昭和46年1月1日

至昭和46年12月31日

<省略>

税額の計算

<省略>

別紙五

脱税額計算書

自昭和46年9月1日

至昭和47年8月31日

<省略>

税額の計算

<省略>

別紙六

脱税額計算書

自昭和47年9月1日

至昭和48年8月31日

<省略>

税額の計算

<省略>

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